2019年7月4日
小笠原 文
多くのヨガスタジオでは、ポーズをとる「ハタ・ヨガ」が中心に行われていて、
数々のアーサナがクラスにでてくると思います。
現在では約8万4千種類というアーサナがある中で、
当然得意なポーズ・苦手なポーズがあるかもしれませんが、
アーサナとは
『快適で安定したものでなければならない』
と、〈ヨーガ・スートラ〉にも記されています。
簡単そうにみえるポーズでも注意すべき点は驚くほどたくさんあり、
快適を得るための適度な筋力や柔軟性・体の機能や使い方・呼吸の方法、
こころの状態や日々の在り方なども大切になってきます。
さらに〈バンダ〉を意識することも安定を目指すには必要です。
◯バンダとは
〈バンダ〉とは、“締める”・“ロックする”という意味をもち、
エネルギーの流れをコントロールしたり、
プラーナを隅々まで力強く巡らせたり、
強度の高いアーサナにおいて身体を守るなど、安定をもたらす役割を果たしてくれます。
各所を締めることにより、快適で安定あるアーサナへ導き、体感も抜群に変化します。
主要な3つのバンダはこちら。
・ムーラ・バンダ(会陰)
・ウッディヤーナ・バンダ(腹)
・ジャーランダラ・バンダ(喉)
他にも、
・肩
・股関節(鼠蹊部)
・膝
・肘
・手首
・足首
と、合わせて9つあると言われていますが、
今回は【肩を締める】ことについて、触れてみたいと思います。
◯肩を締める目的
肩を締めることによって、
⚫︎ 主要な3つのバンダが入れやすくなる
⚫︎ 呼吸がしやすくなる
⚫︎ 体幹がブレにくく、バランスが取りやすくなる
などの効果があり、
よりアーサナを深めることができます。
“肩を締める”とはどのような動きかというと、
腕を肩に引き込むような動きです。
気をつけの姿勢から、特に意識をせずに腕を前ならえしたとき、肩甲骨は開きます。
その腕を上げたまま、肩甲骨をもとの位置に戻そうとすると、
腕を肩にはめ込むような、“引く力” が必要になり、
それが【肩を締める】動きとなります。
◯肩まわりの骨と筋肉の動き
肩にある骨(肩関節)は主に、
⚫︎ 肩甲骨
⚫︎ 上腕骨
⚫︎ 鎖骨
から構成されています。
出典元:Wikipedia
そして肩関節を安定させているのは、
⚫︎ 棘上筋(きょくじょうきん)
⚫︎ 棘下筋(きょくかきん)
⚫︎ 小円筋(しょうえんきん)
⚫︎ 肩甲下筋(けんこうかきん)
の、4つの筋肉です。
出典元:http://therapistcircle.jp/kaisenkinkenban/
さらに、
⚫︎ 菱形筋(りょうけいきん)
出典元:Wikipedia
前に伸ばした腕を肩に引き込むときに、
肩まわりの筋肉を使うというよりは、
肩甲骨に密着している回旋筋腱板と、菱形筋を収縮することに意識を向けてあげると、
肩甲骨の動きもイメージでき、
からだの深層部から力強く動かすことができます。
また、
上腕骨とつながる、
⚫︎ 広背筋(こうはいきん)
出典元:Wikipedia
腕を引き込む際に広背筋を意識すると、
腰から長く、そして幅広く締めることができ、
体幹の強度も高まりやすくなります。
◯呼吸との関係
腕を前方や頭上に伸ばしたとき、
上記にあげた筋肉や、それ以外の繋がっている筋肉も同時に引っ張られます。
すると肋骨も同じく引っ張られて広がり、胸が開いた状態になります。
胸が開くと主要な3つのバンダが入れにくくなったり、
首まわりの空間も狭くなることで呼吸がしにくく、力も入れずらい体勢になりがちです。
肩甲骨を元の位置に戻すことは、
快適な呼吸のスペースが確保でき、
安定したアーサナをとるために重要な役割を果たすなど、
快適で安定した状態へと近づけてくれるのです。
◯どんなアーサナに注意する?
基本となる、タダアーサナをとったときに、肩甲骨がどの位置にあるのかを把握しておくとよいでしょう。
殆どのアーサナで意識を向けておきたいですが、
肩甲骨・肩・肋骨・背中など
クラスの雰囲気に合わせて色々な伝え方ができると思います。
どのタイプのクラスにも共通して出番の多い
『アド・ムカ・シュヴァーナ・アーサナ(ダウンドッグ)』では、
両手で大地を強く押すあまり、肩が詰まって、首の空間が狭まることはよくあるので、
【肩に引き込む】ことを一言添えてあげるとポーズのコツも掴みやすくなるかと思います。
両手を頭上にあげる
『ウルドゥワ・ハスタ・アーサナ』や『ヴィラバドラー・アーサナⅠ』も、
肩を下に引き戻すことで広背筋が落ち着き、
反りやすい腰回りを守るためのバンダも入れやすくなります。
両腕を床につく
『クンバカ・アーサナ』も、
腕の力だけで踏ん張ろうとすると背中が開きがちになります。
肩甲骨を正しい位置に戻すことで、肋骨まわりの筋力も強めやすくなり、3つのバンダも入れやすく、力を全身に分散させることができていきます。
クラスの中でも色々と試してみてください。