2019年4月27日
小笠原 文
1度でもヨガを経験した方は、
インストラクターがアーサナの誘導の際に体だけでなく、
〈視線〉のことも伝えていることに気づくと思います。
ポーズの完成を目指す目的のほか、
単純にその箇所に目を向けてほしいときや、顔の向きを誘導する言葉としても用いられています。
一般的に、アーサナは土台から積み上げられ、視線は最後に付け加えられることが多いようですが
それは〈安全なポーズをとるため〉の理由でもあります。
先に視線を伝えてしまうと、
まだ体が安定せずにふらつく原因になったり、
変な方向に首が向いてしまい、痛める要因にもなるからです。
◯ヨガにおける、視線の役割
ヨガで視線を整えることは、アーサナだけでなく精神の安定も促します。
視覚は約90%もの情報を取り入れてしまうので、視線が定まらずにポーズをとっていると
キョロキョロと周りを見たり、
先生や隣の様子も気になったり、
余計な雑念も浮かびやすくなってしまいます。
そうならないよう視線を定めて、一点を見つめるようにしながら精神を安定させる必要があります。
ただ、
視線を定めるときに大切なことは、
そのもの自体を見つめるのではなく、
その視線の先、遥か数千キロ遠くを眺めるように、心の目で観るというような状態が望ましいでしょう。
精神面だけではなく、アーサナを誘導して完成度を高める役割も果たします。
「目線を上に」と誘導されたときに、眼球だけ動かす人は少ないと思います。
多くは目線と同時に頭も動かし、
『どの方向に、どのくらいの向きで頭を向けたいのか』
ということを「目線」という言葉を用いて導くことができます。
◯アーサナでの主な視線
視線を【ドリシュティ】と呼び、
アシュタンガヨガでは【ウジャイ呼吸】【バンダ】とともに、重要なものとされています。
ドリシュティは、
空・第三の目・鼻先・手・親指・ヘソ・つま先・右後方・左後方
と、これらの9つと定められ、アーサナによってそれぞれ決まっています。
◯脳と視線の関係
人と話をしているとき、無意識に視線をいろいろなところへ向けていると思いますが、心理によってその視線は違うようです。
視線はだいたい6つに分けられます。
⚫︎右上:空想やイメージの映像をみようとしているとき
(未来を描いていたり、夢を語るとき、またはウソをついていて実際にはない情景を思い浮かべているときにも右上をみるようです!)
⚫︎左上:過去の光景を思い出してるとき
(実際に起こったことや見た映像を思い出しているので、記憶を辿りたいときは左上をみるとよいといいます)
⚫︎右横:想像で音をイメージしているとき
(これはどんな音だろう、相手はどんなことを言うのだろう、などといった耳で聞くことを想像するときに向けられます)
⚫︎左横:過去に言われた言葉や、実際に聞いたことに集中しているとき
(聞いた言葉や音、音楽などを思い出すときによく向けられます)
⚫︎右下:体の感覚に意識を向けているとき
(身体的感覚は主に右下によって思い出されたり想像したりします)
⚫︎左下:内側との対話
(自分の中での葛藤や迷いもそうですが、内なる対話のときにも左下へ向けると集中しやすいようです)
これらをみると、
・右側:空想やイメージ
・左側:実際の体験
と繋がっているようです。
また、
・上:未来や過去
・横:聴覚
・下:自分自身
ということがわかります。
探し物をしているときは「左上」
言われたことを思い出しているときは「左横」
ポジティブな未来を想像するときは「右上」
など、ふと思い出したときにお試しください。
ヨガクラスの中でも、
どんなことに意識を向けてほしいかによって視線を誘導したり、シークエンスを組んだりすることもにも活用できそうですね。