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2021年4月17日

kako

小説から気がつくこと

”毎日つまらない、何か面白いこと起きないかな”
と思いながら、退屈な毎日を過ごしている、17歳の少年Karim。
ある日、彼が家に帰ってくると、そこにはものすごい格好でヨガをする父親の姿が、、。

という冒頭シーンから始まる小説があります。
これは私が2年前に、初めて英語で一冊読み切った、思い出のイギリス小説、
”Buddha Of Suburbia”。

私がこの小説を通して学んだことは、

「そうゆうこともあるよね」という気持ちをもつことと、
「自分の気持ちには素直に」ということ。

そしてこれは意外に難しい、けれど大事なことだということ。

○そういうこともあるよね

この小説の舞台となるのは、1970年代のイギリス。
イギリスの郊外(Suburb)に住む、主人公の17歳のKarimは、生まれも育ちもイギリス。
母親はイギリス生まれの白人ですが、
父親は、1950年代にイギリスにやってきたインドからの移民なのです。

Karim本人の感覚では、自分はイギリス人。
でも肌の色は白くはありません。
人種だけでなく階級もミックス。そしてバイセクシャルという設定。

そんな17歳の少年は、俳優になりたいと思いながらも、
どっちつかずな選択ばかりをしてなんとなく生きていますが、
父をきっかけに、さまざまなものに触れ、経験をし、
世の中に翻弄されながら、少しずつ大人になっていきます。

そして、そこには今日本で暮らしているとあまり考えることのない、
人種差別や、階級の問題、そしてジェンダーの問題についても触れられています。

作者のHanif Kureishi は、
そういったことを大きな問題として描くのではなく、
生活の一部として、小説の端々にちりばめています。

小説の雰囲気は決して重くなく、コメディタッチで、とても滑稽です。
歴史や、社会について断片的に知ることができるのももちろんですが、

世の中って綺麗なことばかりじゃないよね
こういう世界もあるよね
みんな生活をしていて色々あるはずだけど、それを口に出さないだけだよね

そんなことが描かれていて、
これまでファンタジーや、美しい小説ばかりを読んできた私にとって
すごく新鮮で、自分になかった価値観に触れることができました。

自分には信じられないことがあった時、
「そういうこともあるよね。」と受け入れてみるということ。
そんな力を少し手に入れました。

○自分の気持ちに素直に

この物語に出てくるキャラクターはみんな、かなり自由です。
それもまた自分にはない部分だったので、読んでいて楽しかったポイント。

その中でも、Kaimの父親として描かれているDadは強烈です。
彼は物語を進める上でとても大事な存在ですが、一般的な”父親”の理想像とはかけ離れています。

父親といえば、子どもを導く存在であり、
強くて、頼りになる、そんなイメージが強いですよね。

けれどDadは、まずとても頼りない。そしてとても楽観的。
実は、彼は移民といってもインドのおぼっちゃまで、勉強のためにイギリスに来ました。
そのため(?)20年経っても道を全く覚えられない。
そして、それをどうにかしようとはしない。困りますね。
けれど、「周りの女性が守ってあげたくなるようなキャラクター」と描写されていました。(笑)

そして、なんと物語が大きく動く1つの要因となる出来事である、離婚。
物語の途中、Dadは妻(Karimの母親)ではなく、もうひとりの女性と生きていくことを決めます。
けれど、妻への罪悪感から、息子の前で泣いたりもします。。。
(そんなこともありつつ、最後には幸せになります。)

普通に考えたら、かなりひどい内容。
彼は父親という設定でありながらも、とても父親らしくないです。

けれど、どこか憎めないのです。

それは、父親である前にひとりの人間として、
普通だったら諦めてしまう自分の内側の気持ちにも素直に従って生きているから。
それがいいのか、悪いのかと聞かれたらなんともいえませんが。

私はそんなところに、少し憧れたのかもしれません。

小説をただの物語としてあっさり読むのではなくて、
時間をかけて深く読んでみると、もしかしたら、新しい発見があって、
自分の日々の生活に活かせる何かを見つけられるかもしれません。

実際には経験できないことも、小説を通して経験してみる。

そんな目線からも、読書は楽しめるのかも。

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ヨガを始めて、自分の呼吸で体がほぐれていくその心地よさを感じたり、 毎日の中で小さなことに心があたたまる瞬間が増えました。 そんな感覚や気持ちを大切にしながら、勉強を続けています。
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