2016年6月28日
伊藤香奈
八肢則(はっしそく)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ヨガの指導者養成講座(通称:TT/Teacher Training)を受講すると、必ず学ぶことで、インストラクターの方で知らない人はほぼいないでしょう。
でも、ヨガスタジオで週に1~2回、スタジオでヨガを楽しまれている、という方、ヨガを始めたばかり、という方には初耳かもしれません。
私も、この言葉を初めて聞いたのは、ヨガを始めて5年ほどたった時に受講した、指導者養成講座で、でした。
それまでは、まったくなじみもなく、そういう規則のような、哲学のようなものが、ヨガに存在していることすら、あまり知りませんでした。
『ヨガの教え「八肢則」って?』
八肢則というのは、ヨガの教えの1つで、「ヨガ・スートラ」というヨガの経典(聖典)に記されている、ヨガの基本的な教えです。
ヨガを学ぶにあたって、「こういうことを、していきましょう」、「こういうことは、しないようにしましょう」という、まるでおばあちゃんからよく言われた言葉集!のようなことから、
こういうふうにヨガの練習を進めていくといいよ(または、進んでいくよ)、という学びのステップを教えてくれています。
なぜ”八”か、というと、8個の軸になる教えがあるからです。
その8個とは?という説明は、google先生に質問していただくとして。
その教えの中の1つにある、「アステーア/盗まない」について、日常に落とし込んだお話をしたいと思います。
アステーアとは、サンスクリット語で「不盗、盗まない」という意味です。
その言葉を聞いて、「泥棒しちゃいけないよね」、「拾ったものは、ちゃんと交番に届けよう(たとえ大金が入ったお財布でも!)」といった内容かな?と想像できると思います。
そうです、その通りです!
「おばあちゃんによく言われた言葉集」ですから。
そんなことは、経典に書いていようがいまいが、みんなわかっていることじゃん!
と思いますよね。
なので、もう1歩深いところを、考えてみたいと思います。
『ついついやってしまう、他人の○○を盗んでしまうこと』
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あなたは今日、12時に彼と駅で待ち合わせ。
久々のデートに浮かれて、洋服を迷ったりヘアセットも時間がかかってしまい、ついつい待ち合わせに10分遅れてしまいました。
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ここであなたは、もう盗んでしまっています。
そう、彼の10分という人生の時間を。
たった10分、と思うかもしれません。
事前に遅れるってメール入れてるから、彼に迷惑をかけていない、と思うかもしれません。
アステーア(不盗)は、そういういいわけを、なくしていきませんか?
という教えではないか、と思います。
『日常に潜むアスティーアの罪』
時間を盗んでしまうことは、本当に無意識のうちに誰でもやっている、といっても過言ではないと思います。
例)会議に資料を忘れてしまい、席に取りに戻った
(会議に出席した全員分x数分の人生を、自分のミスで無駄にしてしまっていませんか?)
例)お客様からの質問に答えられず、お待たせしてしまった
(教えられたことをしっかりとメモしていれば、事前に勉強していれば、起こらなかったことかもしれません)
もちろん、わざとそうしているわけではないでしょう。
ただ、そういう相手の時間も大切にする、という「意識」を持ちませんか?というのが、このアステーアの教えです。
もちろん、それは他人だけではなく、自分にも当てはまります。
例)昨晩ついつい飲みすぎて、1日中二日酔いで気持ち悪かった
(有意義に過ごせるはずの人生の1日分を、自分のせいで無駄にしていませんか?)
例)早く帰りたいから雑に仕事を終わらせて、次の日にやり直しになる
(未来の自分の時間を、盗んでしまっていませんか?)
「盗む」という言葉を使ってしまうと、まるで罪を犯しているような気分になってしまうかもしれません。
ここでのアステーアの学びは、
・時間という見えないものを大切にしていきましょう。
・無意識にしてしまっていることに気づいてみましょう。
・相手が大切にしているものを、大切にしてあげられるよう行動してみましょう。
ということかもしれません。
自分に当てはまることはありましたでしょうか?
ここに載せたことは、ほんの一例です。
このほかにも、日常の中のアステーアを見つけてみてください。
そこにまず、意識を向け、気づいていこうとすることが、
すでに「ヨガをしていること」になっているのです。