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2026年3月2日

kaworu-かをる

「科学的根拠」を疑えるインストラクターが強い

解剖学の講座を受け、生理学の本を読み込み、

「なぜこのポーズがこの筋肉に働きかけるのか」

をきちんと説明できるようになりたい。

そんな探究心を持つインストラクターとしての姿勢は

本当に素晴らしいことです。

私自身も日々、この気持ちで仕事と向き合っています。

「なんとなく気持ちいいから」ではなく、

ちゃんとした根拠を持って生徒さんの身体と向き合おうとする姿勢は、

この仕事への敬意でもあると思います。

でも、ここで一旦立ち止まってみてください。

あなたが今「最新の科学」として信じている知識は、

10年後も「正しい」でしょうか?

科学の本質は「絶対」ではなく「問い続けること」

科学の最大の特徴は、実は「正しいことを証明する」ことではありません。

哲学者カール・ポパーが唱えた「反証可能性」という考え方があります。

科学的な主張とは、「間違いだと証明される余地があるもの」のことです。

簡単に言うと

『絶対に正しい』と胸を張るのが科学ではなく、

『間違っていると証明できる隙がある』のが科学である

という、ちょっと意外なルールです。

これは、解剖学や生理学の世界でも変わりません。

たとえば、かつて「運動前の静的ストレッチは怪我予防に欠かせない」

とされていた常識は、その後の研究で

「むしろパフォーマンスを落とす可能性がある」と見直されました。

特定のポーズが「この臓器を刺激する」という説明も、

近年の筋膜研究や神経科学の進歩によって、

もっと複雑で繊細なメカニズムがあることがわかってきています。

昨日の常識が今日の迷信になることは、

医療や科学の歴史の中で何度も繰り返されてきました。

そしてもう一つ大切なのが、

統計的に「正しい」とされる研究結果が、

目の前の生徒さんに当てはまるとは限らない、という点です。

人の 身体には個人差という「ばらつき」が必ずあります。

年齢、性別、ヨガ歴など。

研究対象になった人たちの平均値が、

骨格も生活習慣も感覚も違うあなたの生徒さんにそのまま当てはまる保証は、

どこにもないのです。

「エビデンスがない=スピリチュアル」ではない

多くのインストラクターが陥りやすい思い込みがあります。

「科学的根拠がないものは信用できない」という考え方です。

でも「今はエビデンスがない」というのは、

「存在しない」ことの証明ではありません。

それはただ、「今の技術では数値として捉えられていない」というだけのことです。

科学は「測れるもの」を扱います。

一方、ヨガのクラスで生徒さんが感じる

「なんだか今日は体が軽い」「呼吸が深くなった気がする」

といった内側の体験は、今の技術では完全に数値化できません。

でも、その体験が「嘘だ」とは誰にも言えない。

科学と主観的な体験は、どちらが正しいかを競うものではなく、

いろんな角度から自分を知る、補い合う視点だと思います。

この視点を持つとどうなるの?

科学的根拠を「絶対の正解」ではなく

「今のところ一番有力な仮説」として受け取れるようになると、

指導の現場に三つの変化が生まれます。

一つ目は、柔軟性です。

教科書通りの反応が出ない生徒さんに対して、

「自分の教え方が悪いのか」「この人の体がおかしいのか」

と追い詰められなくなります。

「この人にはこのアプローチが合わないだけ。別のやり方を探してみよう」と、

自然に思えるようになります。

二つ目は、学ぶ楽しさが続くことです。

新しい研究が出て「これまでの常識が変わった」とき、

それを「裏切られた」と感じるか、「見え方がクリアになった」と感じるかは、

知識との向き合い方次第です。

科学を「更新し続けるもの」として捉えていれば、

アップデートそのものが楽しみになります。

三つ目は、生徒さんが安心できる場づくりです。

インストラクターが「これが正解」と断言し続けるクラスでは、

生徒さんは自分の身体の感覚より先生の言葉を優先しがちになります。

「こういう傾向がありますが、あなたの体はどう感じますか?」と

問いかけられるインストラクターのもとでこそ、

生徒さんは自分の感覚を信じることを少しずつ学び、

自分の身体の主役になっていきます。

地図と現場という考え方

歴史を振り返ると、ヨガのポーズそのものも、

時代や文化によって解釈が変わり続けてきました。

「本来のヨガ」という固定された答えがどこかにあるのではなく、

常にその時代の文脈の中で読み直されてきたのです。

知識もそれと同じです。

科学的根拠は「地図」です。

今わかっている地形を整理した、とても頼りになるツールです。

でも目の前の生徒さんの身体は、地図ではなく「現場」です。

そして現場は、いつも地図より複雑です。

地図を持つことはとても大切。

でも地図が現実そのものだと思い込んでしまうと、

現場で起きていることを見逃してしまいます。

思いがあるからこそ、疑い続ける

「生徒さんのために正確な知識を届けたい」という気持ちは、

この仕事の根っこにある、とても大切な動機です。

でもその思いが「知っていることへの固執」に変わったとき、

学びは止まってしまいます。

本当の意味で生徒さんのことを思うなら、知識を問い続けてください。

「これは本当にこの人に合っているのか」

「今の科学がまだ見えていない何かが、ここにあるんじゃないか」と。

不確かさの中でも、誠実に目の前の人と向き合い続けること。

根拠を持つことと、根拠を疑うこと。

その両方を同時に大切にできるインストラクターが、

一番しなやかで、一番長く、生徒さんに信頼され続けられると、

私は思っています。

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東京都内各所で ヨガスタジオ、スポーツクラブと活動をしております。 ヨガのポーズだけにとらわれずに 「みんなで楽しい」 と感じてもらえる雰囲気を大切に。 ヨガが「変化と成長」への起点になればと思ってます。

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